会長の部屋
12月8日 会長の時間「羅臼岳登頂とクマ撃退スプレー」
12月8日 会長の時間「羅臼岳登頂とクマ撃退スプレー」
皆様こんにちは。先日新幹線でクマ撃退スプレーが誤って噴射されるという事故がありました。上下38本が遅れ、3万9千人に影響したそうです。JRから損害賠償されるようになったら、莫大な請求が来るかもしれないとのことでした。
実は私もこのクマ撃退スプレーを噴射したことがあります。8年前の2015年8月、知床の羅臼岳に登った時です。登山口は遠くて不便なので、レンタカーを借りました。途中キャンプ場で1泊して、登山口にある「地の涯(はて)」という、聞いただけでぞっとするような旅館で前泊することにしました。
知床の山はクマが出ることで有名です。山の地図にも「ヒグマ出没頻度が非常に高い」と書いてありました。もしヒグマと出会ったら、命の危険があると思いました。そこで札幌の登山用品店でこのクマ撃退スプレーを買いました。しかし、1回も使ったことがなく、練習しておく必要があると思いました。
キャンプ場に着くと、さっそくこのクマ撃退スプレーをためしてみることにしました。私たち夫婦の後ろに小学生の男の子が遊んでいました。私は、風向きを考えて前に向けて軽くワンプッシュしました。するとそのスプレーの粉末は、私たちの方に向って来るではありませんか。私たちがいる場所は川上だと思ったのですが、風向きが逆になり、風下になったようです。妻は咳が止まらず、呼吸ができないほどでした。苦しさのあまりじっといておられず、あちこち動き回っていました。
しばらくして、後ろにいた男の子が咳をし出したのに母親が気付きました。私はすぐその親子の所に行き、謝りました。まだ地下鉄サリン事件のことが記憶に残っている頃でしたから、その母親は「何をまいたんですか」とすごい剣幕で私をどなりつけました。私はまず謝り、この粉末は唐辛子でできていて、人体には害がないことを説明し、途中海鮮市場で買った毛ガニを差し出しました。すると毛ガニが効いたのか、どうにか許してもらいました。
その後はトラブルもなく、登山口にある旅館「知の涯」に着きました。それから夕食の時、翌日の羅臼岳登頂の打ち合せをしているとき、妻が「あなた一人で登ってこんね。私は知床の観光ツァーに参加するけん」と平然と言うではありませんか。クマが恐いのです。誰だってクマは恐いです。私も正直なところ、うにがたっぷり入った海鮮丼を食べて、バスで観光ツァーに参加したいところです。
しかし、私には「日本最果ての百名山、羅臼岳」に登るという男のロマンがありました。翌朝、心配する妻に見送られて出発しました。ズボンの右側のポケットにはもちろん、あのクマ撃退スプレーが入っています。登り始めの頃はクマのことで頭がいっぱいでしたが、歩き出すと、きつさのあまり、気にも留めなくなりました。そりゃそうです。羅臼岳は標高こそ1,661mですが、登山口から頂上までの標高差は1,400mで、中級者の限界1,200mをはるかに超えています。クマよけ鈴を鳴らしながら、ふらふらになって歩き続けました。
途中私の前を歩いていた親子が沢の所でヒグマに出会ったそうです。しかし、20分くらい相対していたら、そのクマは草を食べ始め、そのすきに逃げたそうです。結局私は1度もクマには遭いませんでした。
無事登頂を果たし、「地の涯」に辿り着いた時には周りはすっかり暗くなりかけていました。歩行時間は10時間でした。ちなみに妻は観光バスの中からクマを見たそうです。ご静聴ありがとうございました。
